火を起こす

2月から古代技術・民族文化がご専門の関根秀樹先生に火起こしの技術を教えていただいている。休日も焚き火で肉を焼くほど熱中していて、「なんでこんな面白いものをパリピだけにやらせてたんだ」という感じ。


何度かやってみて思ったのは、前回前々回書いたような現代人の病とは真逆の世界だということ。


火を起こすのは大変だ。燃やす枝を集めるのにも時間がかかるし、火起こしの道具から作るのはもっと大変だ。発火させる道具を擦るのにも、枝を集めるのにもエネルギーを使う。一定の火力で火を維持するのも難しいし、とにかく「ワンタップでお手軽に楽しい、15秒ですぐ楽しい」とは真逆の世界。


大変なことも多いが、火の不規則な揺れを見つめていると妙に落ち着く。バチバチと燃える音で聴覚が、燻された香りで嗅覚が刺激され陶酔する感じがある。火が祭りや祈祷に使われるのもわかる。危険だけれど神聖で、暖も取れるし調理もできる、それが火なのだ。


火を起こすことは人間の証明でもある。原発事故や核戦争なんかのことを思うと、人間として生まれたことを憂いたくもなるのだが、火を起こすと人間として生まれたことを肯定し、讃えたくなる。キャンプが流行るのも、そんな感覚を思い出したいという本能があるからだろう。


ある詩人は「火を起こすことは人間に許された数少ない恵みの一つ」と言った。

やっぱりあれこれ求め過ぎたのだ。人間がやっていいことはそんなにない。


特にSNSに疲れた人には焚き火をお勧めしたいのだが、焚き火のできる場所が少ないのが残念だ。「危険だから」と何でも禁止し、街中で焚き火が出来なくなったことこそ現代人の病の始まりかもしれない。



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